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実際に求めている人材を採用できるように「コンピテンシー面接」を取り入れる企業が増えています。「コンピテンシー」とは、ハイパフォーマーに共通する行動特性を指します。
コンピテンシー面接は従来の面接と異なる方法で実施されるため、求職者も事前に準備をしておくことが大切です。
当記事では、コンピテンシー面接の目的や従来の面接との違い、見られるポイントなどを詳しく解説します。質問例や対策も紹介するので、コンピテンシー面接を控えている方は、ぜひ参考にしてください。
コンピテンシー面接(適正面接)とは
コンピテンシー面接とは、求職者の行動や思考を分析して、企業が求める人物像に当てはまるかを見極めるための面接方法です。
「コンピテンシー」は心理学用語として使われていた言葉です。1970年代にハーバード大学で外交官の採用時の試験結果と、採用後の実績の相互関係を調査した結果をきっかけに、人事用語としても用いられるようになりました。
調査の結果で、学歴のある人が高い業績を上げるわけではないこと、高い業績を上げる人には共通の行動特性があることが判明し、コンピテンシーが「優秀な成績や成果を上げる社員に共通する行動特性」という意味で使われるようになりました。
参考:日本企業の大学新卒者採用におけるコンピテンシー概念の文脈 自己理解支援ツール開発にむけての探索的アプローチ|独立行政法人 労働政策研究・研修機構
コンピテンシー面接の目的
コンピテンシー面接の目的は、ある出来事に関して掘り下げた質問を行うことで、職業適性だけでなく、候補者がどのような考えで行動したのかを面接官が把握することです。
例えば「チームリーダーとしてプロジェクトを成功に導いた」という経験においても、本人が能動的にリーダーシップを発揮したのか、周囲から万全のサポートを受けたうえで受動的に行ったのかなど、実情はさまざまです。
コンピテンシー面接では、候補者の実際の考えや行動を把握します。職務経歴書から認識できる個人の経験やポテンシャルだけでなく、知識・スキル・個性についても見極められます。
従来の面接との違い
従来の面接とコンピテンシー面接には、定義や目的のほか、評価による違いなどがあります。
項目 |
従来の面接 |
コンピテンシー面接 |
評価対象 |
・学歴 ・経歴(ポジション) ・実績 ・第一印象 |
・成果を生み出す行動特性 ・ポテンシャル ・知性 ・個性 |
質問内容 |
・出来事の概略 ・志望動機 |
・出来事の実情 ・行動の詳細、意図 |
評価基準 | 要素別絶対評価 | コンピテンシーレベル |
面接官による評価 | 主観的評価 | 客観的評価 |
質問の進め方 | 面接官ごとで異なる | 誰が実施しても同様の手順 |

従来の面接は、自己PR・学歴・職歴・志望動機など広範囲の質問をすることで、候補者を総合的に判断できるものでした。
しかし、把握できるのは表面的なものになりがちで、かつ面接官によって評価にばらつきがあり、採用後のミスマッチが生まれるリスクを抱えていました。
一方、コンピテンシー面接では、出来事の詳細を掘り下げて質問することで、候補者の行動特性や本質の見極めが可能です。転職成功を目指すためには、従来の面接との違いを理解し、コンピテンシー面接に対する準備を行う必要があります。
コンピテンシー面接で見られるポイント
コンピテンシー面接では、個人の本質や行動特性、自社への適性があるかを見極められます。それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。
個人の本質・人間性
繰り返し掘り下げる質問によって、個人の本質や人間性の見極めが行われます。例えば、過去の成果に関する質問を繰り返すことで、その人が真実を語っているのかがわかります。なぜなら、事実と異なった事を話していると、どこかでつじつまが合わなくなってしまうものだからです。
嘘をつくつもりはなくても、その場しのぎで答えようとすると、一貫性のない内容になってしまいます。論理的な回答ができるかは、個人がよく考えて行動するタイプの人間かどうかを確かめるポイントにもなります。
また質問を繰り返すなかで、ストレス耐性があるか、自発的に考えて行動できるか、チームワークを大切にするかなども見極めようとしています。
行動特性
コンピテンシー面接で重視されるのは、大きなプロジェクトに参加した事実よりも行動特性です。例えば、プロジェクトを進めるにあたって自主的に行動したのか、トラブルにはどう対処し、行動した際の動機は何かなどを見ようとします。
行動特性を知るためには、深く掘り下げた質問をすることになります。過去のエピソードに対して、状況はどのようなものだったのか、どのように行動しどのような結果が得られたのか、についての質問がなされることでしょう。
自社への適性や貢献できる能力があるか
コンピテンシー面接でもっとも大切なポイントとなるのが、自社への適性や貢献できる能力があるかどうかです。過去に成果や成績を出していたからといって、必ずしも自社で再現できるとは限りません。
そのため、コンピテンシー面接を行う際は、自社の優秀な社員の行動特性を基準にして評価がなされます。
企業が求めるスキルや能力は決まっています。そこで求職者の過去の経験を掘り下げつつ、個人の人間性や行動特性を「自社の必要」と照らし合わせて評価するのです。
評価項目には、チームワークやストレス耐性、柔軟性や行動力などがあります。また、個人の思考パターンを知ることで、自社で活躍できる人材かどうかを見極めることもできます。
コンピテンシー面接で用いられる「STARメソッド」について
コンピテンシー面接でよく用いられるのが「STARメソッド」です。STARは以下をもとにしたフレームワークで、各場面について掘り下げた質問を行います。
- Situation(状況)
- Target&Task(目的・課題)
- Action(行動)
- Result(結果)
「STARメソッド」を活用することで、企業は限られた時間のなかでも求職者の本質を見極めやすくなります。
求職者にとっても、STARメソッドの理解は重要なポイントです。話す内容が整理されることで、質問に対して面接官に伝わりやすい回答ができます。

コンピテンシー面接の質問例と回答例
コンピテンシー面接での質問は前職のポジションによって異なりますが、多くはSTARメソッドをもとに質問を繰り返し掘り下げて面接が進められます。
ここでは、STARメソッドに沿ったコンピテンシー面接の質問例と回答例を詳しくみていきましょう。
Situation(状況)を問う質問「組織の中のあなたのポジションを教えてください」
Situation(状況)では、前職で置かれていた状況やその背景を聞く質問を投げかけられます。
【回答例】
前職の製造メーカーでは、直販部門の営業マネージャーとして従事しておりました。支店には12名の営業担当が在籍しており、メンバーの育成やモチベーション管理に加え、新規顧客の獲得状況や売上実績の管理、市場・顧客動向の分析に基づく営業戦略の立案にも携わっておりました。 また、製品開発や生産管理部門とも連携しながら、各営業担当が抱える顧客の課題やニーズを把握し、最適な提案ができるよう支援し、個々の成果はもちろん、支店全体としての売上拡大を目指して日々業務に取り組みました。 |

コンピテンシー面接では、職務経歴書から把握できる「営業部のマネージャー」という表面的なものだけでなく、自身がどのような状況、ポジションで業務を遂行していたのかを伝えることが大切です。
Task(課題)を問う質問「組織が抱えていた課題はありますか?」
Task(課題)では、所属していた組織において「どのような課題があったのか」「課題に気付いた経緯はなにか」などの質問があります。
【回答例】
支店の月間売上が昨年対比で5%も下回ってしまった時期がありました。 要因を分析した結果、前年は一時的な特需により売上が伸びていたことが分かりました。しかし、私はその特需の反動を事前に把握しておらず、今年度に同様の需要が見込まれるかどうかの確認や、それに代わる売上確保策について営業担当者と十分に連携ができていなかったことを反省しました。 |

課題の概要について話すだけではなく「課題が生まれた原因」「課題に気付いた経緯」までを伝えるのがポイントです。背景を話すことで、面接官は次に質問する「行動」において、候補者が能動的に行ったのか、受動的だったのかという点を確認できます。
Action(行動)を問う質問「業務上でトラブルが起きた際にどのように対処しましたか?」
Action(行動)では、業務上の課題やトラブルが起きた際の具体的な行動について質問があります。特にハイクラス転職では、チームワークやリーダーシップ、マネジメント力を示せる重要な質問です。
【回答例】
売上高を回復させるため、すぐに営業メンバーとのミーティングを実施しました。数値データを周知し、原因を全体で確認したのち、課題解決のための戦略を立てました。 私が主導で行ったミーティングでしたが、メンバー一人ひとりからもアイデアを出してもらい、全員で方向性を共有できたことで、実行可能な戦略を立てることができたと感じています。 このように、トラブル発生時にも冷静に状況を分析し、課題を可視化したうえでチームを巻き込みながら対応できた経験は、今後の業務にも活かせると考えています。 |
Action(行動)の質問では、課題の解決に向けて取った行動を順序立てて話すのが大切なポイントです。
管理職でなくても、課題を解決に導くためにリーダーシップを活かした経験を具体的に伝えれば、必要なコンピテンシーを持ち合わせていることを示せます。
Result(結果)を問う質問「チーム内の課題を解決したときのお話を聞かせてください」
Result(結果)では、課題解決に向けた行動による結果についての質問があります。具体的な成果や数値を示すことで、より説得力のあるアピールになります。
【回答例】
チーム内で検討した営業戦略を着実に実行し、進行中の課題についてはメンバーと密にコミュニケーションをとりながら随時対応・改善を図りました。その結果、売上は10%増、昨対比でも5%増と、着実な成果につながりました。 プレッシャーのかかる局面もありましたが、課題を一つずつ乗り越えることでチームの士気と一体感が高まり、結果として組織全体の力を底上げできたと実感しています。 |
ハイクラス転職では、具体例を挙げて説明することが重要です。数値を示したり、チームメンバーの反応まで伝えたりすることで、客観的な評価をアピールできます。

コンピテンシー面接の対策とコツ
コンピテンシー面接と従来の面接は大きく異なるため、面接に向けてしっかりと準備しておく必要があります。ここでは対策方法を4つ紹介します。
応募先企業が求める人物像・能力を把握する
企業が知りたいのは、自社への適性や貢献できる能力があるかどうかです。企業によって理想とする人物像は異なり、職種やポジションによっても求められるスキルがあります。
そのため、面接において応募企業が求める人物像や能力を把握しておくことは非常に重要です。
企業が求める人物像や能力は、企業の公式サイトや企業理念などを注意深く読むことでわかります。また、説明会やOB訪問で情報収集をすることも大切です。
自分の経験や実績を具体的に答えられるように自己分析を徹底する
自身が経験したことであっても、過去を正確に思い出して伝えるのは簡単なことではありません。また、面接時にその場で的確にこたえられるか不安に感じる方もいるでしょう。
このような不安を感じる場合は、自分の経験や実績をまとめて、具体的に答えられるように準備しておきましょう。自己分析を徹底して、予想外の質問にも落ち着いて答えられるようにすることも大切です。
得たもの・学んだものを伝える
コンピテンシー面接では、成功体験をアピールするよりも、出来事によって得たものや学んだものを伝えることが重要です。それにより、自身の価値観や、学んだことをどのように次に活かそうとしているかを伝えられます。
面接官は現時点のあなたではなく、入社後のあなたの活躍をイメージしながら面接をしています。このことを意識しながら、わかりやすく順序だてて答えられるように準備しましょう。
経験で得たことを今後キャリアにどのように活かすのかをストーリー仕立てで話す
経験で得たことで話を完結してしまっては、あなたの行動特性や魅力を十分にアピールすることはできません。コンピテンシー面接では、以下のポイントを押さえたうえで質問に回答することが大切です。
- ひとつのストーリーとして話す
- 結果だけでなく、経験から何を学んだのかも説明する
- 端的にわかりやすく伝える
課題や困難に直面した際に、どのようなアクションを起こして解決策を見つけ、その経験で学んだことが今後のキャリア・仕事にどのように活かせているのかをストーリーで展開することが重要です。
経験で得たことを今後のキャリアでどのように活かすのかをストーリー仕立てで話すことで、説得力を持たせつつ、わかりやすく伝えられるでしょう。
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コンピテンシー面接は個人の行動特性を把握するための面接方法であり、導入する企業が増えています。
特に、外資系・日系グローバル企業では、自社が求める優秀な人材を採用するために、コンピテンシー面接の導入が進められています。
そのため、外資系・日系グローバル企業をはじめ、ハイクラス転職を目指す方は、従来の面接対策だけでなくコンピテンシー面接にも備えておくことが重要です。
そこで、外資系企業への転職を検討している方は、外資系・日系グローバル企業の転職に強い転職エージェントを利用してみてはいかがでしょうか。
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エンワールド・ジャパン編集部
外資系・日系グローバル企業のハイクラスに精通するエンワールドの編集部員が、転職やキャリア、日々の仕事のお悩みに役立つ情報を執筆します。