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毎年2月頃になると耳にし始める春闘という言葉。大企業の労働組合が賃金アップを求めて経営陣と交渉したというニュースを目にする機会も増えてきます。
この記事では、春闘とは何か、その具体例や2023年の春闘について、また、春闘に向けて人事に必要な業務などに関してFAQ形式で解説します。
Q. 春闘とは?
春闘とは、1955年から始まった労働組合と企業の経営陣で行われる労使交渉のことで、日本労働組合総連合会では「春季生活闘争」を正式名称としています。
春闘という名称は、多くの企業にとって新年度になる4月に向けて、労働組合が企業に要求を2月に提出し企業からの回答が3月頃であることに由来しています。
春闘にて要求や交渉が行われる主なテーマは、賃金などの引き上げと労働条件の改善ですが、昨今は労働時間の減少や職場環境の改善などと内容は多岐に渡ります。
一般的に春闘は、大企業を中心に2月から開始され、その後、中小企業が続きます。そのため、大企業の春闘で決定された賃上げや労働条件などの相場が、中小企業の交渉の指標となっていきます。
Q. 春闘の具体例は?2023年の春闘について
記録的な物価上昇が進む中、日本経済団体連合会の「2023春季生活闘争第4回回答集計結果(2023年4月13日公表)」によると、2023年春闘の平均賃上げ率は3.69%と、30年ぶりの高さとなりました。
一方、厚生労働省の春闘賃上げ率は、1994年以来の3%台になる見込みで、前年からの改善幅は1%以上に上り、1980年以降では最大となる可能性があります。
特に、自動車や電機などの大手企業では満額を含む近年にない高い水準の回答が相次いでおり、例えば大手自動車メーカーは以下のような満額回答をしています。
- トヨタ自動車:職種や階級ごとに賃上げ率は異なるが、最も高い水準で月額9,370円の賃上げとなる見通し
- ホンダ:30年ぶりの高い水準となるベースアップと定期昇給をあわせた賃上げ幅は、月額1万9,000円。若手への配分を厚くする
- 日産自動車:現在の賃金体系が導入された2005年以降、最も高い水準の月額1万2,000円の賃上げ
また、大手企業の賃上げ率の伸びを下回ってはいるものの、中小企業でも賃上げ率が前年を大きく上回りました。
非正規雇用についても、流通大手のイオングループが時給を平均7%ほど引き上げる方針を示したほか、サッポロビールは月額一律9,000円のベースアップを決定するなど前向きな動きが相次いでいます。
ただし、企業収益は全体としては堅調であっても、企業の規模・業種によってばらつきがあり、また、中小企業は大企業に比べて収益環境が厳しい現状があることから、今後、持続的な賃上げになるかどうかは不透明な状況です。
Q. 春闘に向けて人事に必要な業務は?
人事担当者は、企業全体の利益と従業員の利益を両立させるため、春闘に向けてさまざまな業務に取り組む必要があります。
ここでは、春闘に向けて人事担当者が行う業務の例を解説します。
春闘に関する情報収集
まずは、春闘に関する業界全体や競合他社の動向を把握することが重要です。
そのためには、連合・経団連が発表する「賃金白書」や、厚生労働省などが発表する「賃上げ集計」など公的な情報や、同業他社や事業展開、採用面などで競合する企業の情報を常に収集し、自社の戦略に照らし合わせた分析を行う必要があります。
経営陣との協議の準備
春闘期間中に行われる経営陣との協議に備え、企業の立場や方針を明確にし、労働組合とスムーズに話し合いができる環境・仕組みを整えつつ、賃上げや補償、福利厚生改善案などの提案を準備します。
労働組合との調整
労働組合との調整を行うのも人事担当者の業務です。労働組合側の意見や要望、提案を聞き、従業員と企業の両方の立場を考慮した落とし所を検討します。
従業員の意見収集や満足度調査の実施
従業員に対し、満足度調査を実施するなどして従業員の意見や要望を収集することも大切です。
集めた声は、春闘に向けた企業側の提案や改善提案に役立てることができます。これは結果的に、より良い労働環境の実現にもつながります。
労使間の交渉・調整
前述した経営側との準備、労働組合との調整、従業員の意見を踏まえ、労使間の交渉・調整を行い、円滑に合意形成へ導くことが求められます。
交渉のキーパーソンとなる人物には、事前に自社の状況や課題・方針などを伝えておくことが、交渉をよりスムーズに進めるポイントです。
春闘に向けた予算作成
賃金改定や福利厚生の改善などのコストに関わる要望に備え、企業側と労働組合との合意形成に向けた予算を作成します。その際には、企業の財務状況を踏まえつつ、今後の経営戦略・人材戦略に基づいた具体的施策を予算に落とし込む必要があります。
今回は春闘について解説しました。エンワールドは、企業のグローバル人材に関する採用課題をあらゆる方面からサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。