【人事用語FAQ】裁量労働制とは

2023.04.19
【人事用語FAQ】裁量労働制とは

裁量労働制は、会社員の働き方に関するとても重要なキーワードです。
この記事では、裁量労働制とは何か、適用される職種、メリット・デメリット、導入する際の注意点などについてFAQ形式で解説します。

Q. 裁量労働制とは?

「裁量労働制」は、労働時間制度のひとつで「みなし労働制」とも呼ばれます。

裁量労働制では、実際に働いた実働時間ではなく、あらかじめ労使で定めた一定時間を労働時間としてみなし、報酬として支払います。

これにより勤務時間の制限はなくなり、労働者の裁量で労働時間を管理することが可能です。

 

Q. 裁量労働制が適用される職種は?

2023年現在、裁量労働制が適用される職種には「専門業務型裁量労働制」と、「企画業務型裁量労働制」の2種類があり、それぞれ対象業務と導入の手順が異なります。

 

専門業務型裁量労働制

専門性の高い次の19の業務が対象です。

導入するには、労使協定にみなし労働時間や対応などの必要事項を定めたうえで労基署へ申請します。

 

  1. 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析又は設計の業務
  3. 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務、または、放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務
  4. デザイナーの業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

 

出典:厚生労働省ホームページ|専門業務型裁量労働制

 

企画業務型裁量労働制

企画・立案・調査・分析を行う業務で広く導入することができますが、次の3要件も満たす必要があります。導入するには、みなし労働時間や対応などの必要事項に関して労使委員5分の4以上の議決をとったうえで労基署へ申請します。

  1. 事業の運営に関する事項(対象事業場の属する企業・対象事業場に係る事業の運営に影響を及ぼす事項)についての業務であること
  2. 当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること
  3. 当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

 

出典:厚生労働省ホームページ|「企画業務型裁量労働制」の適切な導入のために

 

Q. 裁量労働制と他の制度との違いは?

裁量労働制と類似、または混同されやすい制度についてそれぞれ違うポイントを解説します。

 

1. 高度プロフェッショナル制度(高プロ)

証券アナリストやコンサルタント、研究開発職などの専門的知識を持ちつつ一定以上の年収がある専門職を限定に、残業代などの割増賃金が発生する労働時間の規制対象外とする制度です。

深夜手当や休日手当などが割増賃金の支払い対象である裁量労働制に対し、深夜・休日労働に関しての割増賃金の支払いがありません。

 

2. 事業場外みなし労働時間制

みなし労働時間を設定する点では同じですが、職種の制限がなく使用者の指揮監督が及ばない業務がすべて対象となります。また、時間外労働、深夜労働、休日労働のすべてが割増賃金の支払い対象になる点も異なります。

 

3. みなし残業制度(固定残業代制度)

法的には存在しない制度ですが、契約にある残業時間をみなし残業時間とするものです。裁量労働制は所定労働時間部分を対象とするのに対し、所定労働時間を超えた残業時間部分を対象とします。

 

4. フレックスタイム制度

会社が定めたコアタイムに就業していれば、始業・終業の時刻を自由に選択できる制度です。「みなし労働時間」の設定はなく、所定労働時間は働かなければならない点が異なります。

 

Q. 裁量労働制の導入におけるメリット・デメリットとは?

ここでは、裁量労働制を導入する際の主なメリットやデメリットについて解説します。

 

企業側のメリット

人件費の管理負担が減る

深夜労働や休日出勤等の一部残業代で上振れする可能性があるものの、始めに定めた勤務時間をみなし労働時間として給与を支払うので、ある程度固定で人件費を算出できコスト管理する負担減に繋がります。

 

社員の生産性が上がり人件費を削減できる

従業員は1つの業務にどれだけ時間がかかっても同じ給与しかもらえないため、「できるだけ早く終わらせよう」という意識が高まり生産性アップにつながる可能性があります。

同じ業務を採用労働制を導入せずに行った場合に比べ人件費を削減できることもあるでしょう。

 

従業員側のメリット

労働時間を短くできる

従業員は業務完了や求められた成果が出せればその分早く仕事を終わらせることができます。

 

仕事の自由度が高まる

自分のライフスタイルに合わせて出勤・退勤時間を決めて働くことができるなど、仕事の自由度が大きく高まります。

 

企業側のデメリット

裁量労働制の対象従業員は、自由な時間に自分の好きな方法で働くことになるため、労働管理やミーティングの設定などが難しくなります。裁量労働制には遅刻や早退の概念がそもそもないので、注意することもできません。

 

従業員側のデメリット

仕事の量が多かったり手間がかかったりした場合、または、自身で生産性が上げられない場合、労働時間が長くなってしまっても深夜労働と休日労働以外は残業代が出ません。ただし、1日のみなし労働時間が8時間を超える契約の場合は、8時間を超えた分の残業代が付きます。

 

Q. 裁量労働制を導入する際の注意点は?

最後に、裁量労働制を導入する際にトラブルにならないよう抑えておきたいことを2つご紹介します。

 

有給休暇の事前申請を義務付ける

事前に申請がなく裁量労働制の対象従業員が出社していない場合、勤務日なのか休暇日なのかがわかりません。当日に混乱が起きないよう、労使協定や就業規則で有給休暇の事前届け出の義務づけをしておくと回避できます。

 

残業代が発生するケースがある

次の3つのケースのいずれかに当てはまる場合、裁量労働制でも残業代が発生するので、コスト管理の際に注意が必要です。

  • みなし労働時間を8時間を超えて設定した場合
  • 22時〜5時の時間帯に働いた場合
  • 法定休日に勤務した場合

 

 

今回は裁量労働制について解説しました。エンワールドは、企業のグローバル人材に関する採用課題をあらゆる方面からサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

 

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