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昨今、注目されているビジネス用語のひとつに「エンパワーメント」があります。組織のパフォーマンスを引き出し、従業員のコミットメント強化にも繋がることから、この考え方を取り入れる企業は増加傾向にあります。
この記事では、エンパワーメントの意味や注目される理由、メリット・デメリットや事例などについてFAQ形式で解説します。
エンパワーメントとは
エンパワーメント(Empowerment)とは、力(権限)を与えるという意味を持つ言葉です。もとは、自由公民権運動や女性の権利獲得運動といった社会変革活動において使われていたものです。
現在ではビジネス分野でも使われており、その際には「現場への権限委譲」を意味します。
エンパワーメントは、なぜ注目されている?
現場への権限委譲を意味するエンパワーメントは、従業員が自ら意思決定することを可能にします。そして、それらは個人のコミットメント強化や組織の機動力強化、さらには企業のエンゲージメント向上に繋がるとされており、マネジメント手法や育成手法として注目されています。
エンパワーメントのメリット・デメリットは?
ここでは、エンパワーメントのメリットとデメリットについて紹介します。
メリット
エンパワーメントは、従業員の主体性を高め判断力を養う機会をもたらすので、人材育成施策のひとつとして用いることができます。また、自ら判断したことに取り組むことから従業員一人ひとりのコミットメント強化やモチベーション向上にも繋がります。
そして、これらが成長実感の機会となることでエンゲージメントが高まり、労働生産性の向上や定着率改善も期待できます。
デメリット
権限委譲する相手が経験不足だったり力量不足だったりする場合には、ミスの発生リスクが高まります。また、現場に判断を委ねることでガバナンスの難易度は高まると考えてよいでしょう。
人によっては主体的に判断することがストレスになる場合もあり、かえって生産性が下がる可能性もあります。
エンパワーメントの具体例は?
ここでは、エンパワーメントの具体例を紹介します。
上限を設けて決裁権を与え、業務の遂行範囲に自由度を持たせる
アメリカの有名な高級ホテルチェーンでは、次の3つのエンパワーメントが定められています。
- 1日に最高2,000ドルまで決裁することができる
- 上司の判断を仰がずに自分の判断で行動できる
- 自分の通常業務を離れて、セクションの壁を超えて仕事を手伝える
これによって、従業員は現場で耳にした顧客の声に臨機応変に対応することができるため、結果としてホテル全体が顧客から高い評価を得ています。
積極的な情報開示と権限委譲で、社員を育成する
アメリカの巨大IT企業では、社内情報を積極的に公開するとともに、従業員に権限委譲することで仕事を学んでもらおうというスタンスをとっています。
週1回の全社ミーティングでは、経営のトップが自ら会社の状況説明を行った後、質疑応答の時間が設けられています。従業員と経営とが直接意見交換する場を設けることで、社員の視点を上げるとともに、モチベーションアップとコミットメント強化にも努めています。
細かいマニュアルを定めず、従業員の主体性と結果を評価する
世界中に店舗展開するあるコーヒーチェーンでは、詳細な接客マニュアルというものが存在していません。接客マニュアルには「お客様が何をして欲しいのかを考える」と記載されているだけで、従業員の主体性を求めるようになっています。
一方で、顧客満足度に貢献した従業員にはインセンティブが支給されるなど、彼らの働き甲斐を醸成する仕組みは緻密に整えられています。
エンパワーメントを導入する際の注意点は?
エンパワーメントを導入する際には、以下の注意点を現場に周知、浸透させるようにしましょう。
エンパワーメントする従業員の人柄や能力を見極める
すでに述べた通り、委譲する権限に見合う能力がないと、重大なミスや損失に繋がる可能性があります。 そのため、エンパワーメントする従業員の見立ては慎重に行うように現場に働きかけるようにしましょう。
エンパワーメントした後も丸投げにせず、フォローを徹底する
権限委譲後に、上司が部下へ責任を丸投げするような状態にならないように留意しましょう。フォロー体制を定期的に確認する仕組みも、合わせて導入するとよいでしょう。
短期の成果を求めすぎない
権限を委譲した直後から、上司や前任と同じレベルの成果を上げるのは難しいといってよいでしょう。そのため、ある程度のミスやトラブルを許容できる風土を築くことも重要です。
上記を踏まえ、エンパワーメントを成功へと導く企業文化の醸成や体制の構築を推進していきましょう。
今回はエンパワーメントについて解説しました。エンワールドは、企業のグローバル人材に関する採用課題をあらゆる方面からサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。