近年のグローバル化により、海外で働くことに関心をもつようになった方もいるのではないでしょうか。一方で、日本国内で働いていると海外のビジネスパーソンと接する機会も少なく、海外で働くイメージが湧きにくいかもしれません。
この記事では、海外で働く方法やメリット、海外で働く際におすすめの仕事10選を紹介します。
海外で働く6つの方法
海外で働く方法として、主に以下の6つがあります。
- 日系グローバル企業に就職し海外赴任する
- 海外の現地企業に就職する
- 海外に留学して現地企業に就職する
- ワーキングホリデーで働いた後、現地企業に就職する
- 国連や国際NGOで働く
- フリーランスとして海外で生活しながら働く
まずは、それぞれの方法を理解し、挑戦できそうな方法をピックアップしてみましょう。
日系グローバル企業に就職し海外赴任する
いわゆる駐在員です。日本人が海外勤務をするうえでは、もっとも実現性が高く、安定した方法といえるでしょう。
日系グローバル企業に就職して、海外勤務の希望が通ることで実現します。給与や福利厚生が日本の水準となるため、現地企業と比べて高待遇であることが多いというメリットもあります。また、海外への赴任手当が追加されると、給与アップも期待できます。
海外の現地企業に就職する
海外で働くためのもっともスタンダードな方法は、現地企業に就職することです。ビジネス英語や現地語のスキルが必要なほか、日本企業に就職する場合と比べて専門的なスキルや経験を求められることが多く、ハードルは決して低くないでしょう。
しかし、自分で国や仕事内容を選べることや、日本で生活しているときには見つけられないような優良企業と出会える可能性があることはメリットといえるでしょう。
給与は現地水準となるため、どの国で働くかによって大きく変わります。日本よりも水準が低い国で働くと、年収が下がってしまう可能性もあるでしょう。ただし、給与水準が低い国は、物価も低いことが多いため、現地で生活する分には問題ありません。
年収アップを狙う場合は、日本よりも給与水準が高い国を狙う必要があります。
海外に留学して現地企業に就職する
海外企業に就職する際の障害として、多くの方が語学力を挙げるでしょう。ビジネスの場で相手の要望や意見のディテールを汲み取り、自分の意思や主張を相手に伝えるためには、日常会話レベル以上の高い語学力が必要となります。
海外留学は、実用的なレベルにまで語学力を高めるための手段であると同時に、インターンシップの経験など、現地企業に就職するきっかけを得られる機会にもなるでしょう。
給与水準の考え方は、海外の現地企業で働く場合と同様です。
ワーキングホリデーで働いた後、現地企業に就職する
ワーキングホリデー制度とは、相手国・地域の18〜30歳(※)までの青年に対し、旅行や滞在資金を補うための就労を認める制度です。制度で決められた29ヵ国・地域において、滞在費用を稼ぎながら休暇を楽しめます。
ワーキングホリデー制度には、子どもやその他被扶養者を同伴しない、帰りに必要な旅券やそのための資金は用意していく、など細かい条件があるので事前準備が必要です。
ワーキングホリデーの期間に実際に海外で働くことを経験し、自分にあっているかどうかを確認するとともに、その経験を活かして現地で就職するきっかけをつくることもできるでしょう。
※アイスランドとの間では、18~26歳と決められています。
国連や国際NGOで働く
国連職員や、ユネスコまたは赤十字社などの国際NGO(Non-Governmental Organization=非政府組織)で働くという道もあります。いずれも高い語学力や学歴、経験やスキルなどを保有する人材を求めており、簡単に実現できる道ではないでしょう。しかし、やりがいがあり、国際的なステータスの高い仕事のひとつです。
国連職員は、国際公務員にあたります。国際公務員になる近道として、例えば、JPO派遣制度という制度を活用する方法があります。
JPO派遣制度を活用すると、正規職員となるために必要な知識・経験を培うことが可能です。ただし、JPO派遣制度への応募は、35歳以下かつ募集分野の修士号以上の修了が条件となっています。そのため、条件を満たしているかどうかが挑戦の可否を決めます。
国際公務員は、初任でも日本人の平均年収458万円(※)を超える542万円ほど、キャリアを積むと2,000万円以上を狙える職種です。
フリーランスとして海外で生活しながら働く
フリーランスとして日本企業から仕事をもらいながら、海外で生活する方法もあります。日本企業とのやりとりだけなら、英語力が必要ないため、英語力に自信がない方も挑戦しやすいでしょう。
年収は職種や働き方によって大きく変動します。経産省の「個人事業主・フリーランスの実態に関する調査 報告書」によると、フリーランスの年収は200万円以上300万円未満の割合が19%と最も多いことがわかっています。この範囲で収入が留まる場合は、物価を考慮して生活する国を考えなくてはなりません。
英語が話せなくても海外で働ける?必要な語学レベル
方法によっては、英語が話せなくても海外で働くことは可能ですが、基本的にはビジネスレベルの英語力が必要となります。ビジネスレベルの英語力とは、TOEICでいうと800〜900点程度です。
英語が母国語でない国の場合はそこまで高い英語力は必要なく、TOEIC600〜700点程度でも十分とされています。ただし、英語を共通言語として利用しない国である中国や韓国では各国の語学力が必要です。
海外で働くメリット
では、海外で働くメリットはなにがあるのでしょうか。ここでは海外で働くメリットを6つ紹介します。
- 語学力が上がる
- 毎日が異文化体験になる
- 色々なところへ旅行できる
- 外貨を稼ぐことができる
- 日本の常識や枠から離れられる
- 個人が尊重される
語学力が上がる
海外で働くためには、多くの場合、英語や現地語などの語学力が必要となります。日本国内でも一定の水準までならば身につけられるかもしれませんが、実践にまさる学習方法はないといってもよいでしょう。
海外での日常生活やビジネスシーンで、さまざまな人と話すことを通して、英語や現地語を高いレベルまで上達させることも期待できます。
毎日が異文化体験になる
日本は良くも悪くも単一民族国家であり、異なる文化や宗教をもつ人々と接する機会が少ないといえます。その点、海外で働くことで、自分とは異なる宗教や価値観をもっている人々と交流する機会は増えるでしょう。
これまで考えもしなかったものの見方や考え方に触れることは、それ自体が得がたい経験になるでしょう。
色々なところへ旅行できる
島国である日本から海外に行こうと思うと、飛行機や船で海を越える必要がありますが、多くの諸外国はほかの国と地続きです。欧州など、出入国手続きなしに国境を行き来できる国もあり、様々な国や地域を気軽に旅行できることも海外で働く魅力のひとつといえるでしょう。
外貨を稼ぐことができる
通貨は不変の価値をもつものではありません。将来、日本の信用が低下した場合は、円安になり、保有している日本円の価値が国際的な観点から低下する可能性があります。
しかし、海外勤務を通して外国通貨を取得すれば、為替リスクを回避して資産を安定的に保有することもできるでしょう。特に、円安・ドル高の昨今は、海外で働いたほうが稼げることから、海外で働きたい人が増えています。
日本の常識や枠から離れられる
日本の職場によく見られるストレス要因のひとつに、同調圧力というものがあるといわれています。異なる価値観、異なるバックグラウンドをもつ人への許容度が低く、同じようなものの考え方や判断を求めがちな日本社会は、同質性が高いとされています。
一方、海外企業では「人はそれぞれ違っていて当たり前」という意識が強いため、日本企業特有の空気を負担に思う方にとっては、居心地よく感じられるかもしれません。
個人が尊重される
日本社会では、組織やチームでなにを成すかが重視される傾向にあります。そのため、チームの和を保つことが必要以上に重視されるケースもあるでしょう。しかし、海外では個人主義が浸透しており、個人としてなにができるかが重視される傾向にあります。
個人の意思やスキルアップが尊重されるため、自分の実力で勝負し、評価されたいという人には海外で働く方が向いている可能性があります。
海外で働く前に知っておきたい注意点
海外で働く前に、以下の4点について知っておくと、必要な準備を進められます。
- 国によっては治安に不安がある
- 国によっては給与水準が低い
- 日本のような医療サービスを受けられる国は少ない
- 海外で働くためには就労ビザが必要となる
国によっては治安に不安がある
国によっては、治安に不安がある場合があります。日本のように、夜間1人で出歩くことが難しい国は多いでしょう。国や地域の特性を十分にリサーチし、安全に生活できるかどうかを確認する必要があります。
国によっては給与水準が低い
国によっては、日本よりも給与水準が低い可能性があり、年収がダウンすることもあります。現地で生活する分には問題ありませんが、日本に戻ってきたとき貯金が増えていないといった状況に陥るため、注意が必要です。海外でしっかり稼ぎたいという場合は、事前に給与水準をリサーチしましょう。
日本のような医療サービスを受けられる国は少ない
日本は国民皆保険制度のおかげで、高品質な医療サービスを低価格で受けられます。そのため、海外に行くと医療サービスの価格の高さや質の低さに驚くことがあります。海外では、任意保険に加入することが一般的であるため、保険に加入していない状態で医療サービスを受けると高額になってしまいます。
現地で病院にかからないためにも、日本でしっかりと治療を受けてから海外に行くといった工夫が求められます。
海外で働くためには就労ビザが必要となる
海外で働くためには、ビザや許可などが必要となります。
例えば、アメリカで働くためには以下の3つの就労ビザがあり、条件に合わせて必要な手続きを行います。
- 特殊技能職ビザ(H-1B)
- 季節農業労働者ビザ(H-2A)
- 熟練・非熟練労働者ビザ(H-2B)
シンガポールの場合は、基本的に以下の2つです。
- EP(エンプロイメントパス)
- Sパス
このように、国によって必要なビザや手続きが大きく異なるため、働きたい国のビザについてリサーチしましょう。
海外で働くことが向いている人の特徴
海外で働くことが向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 日本とは異なる環境に適応できる人
- 積極的にコミュニケーションを取れる人
- 自力で問題を解決する能力がある人
日本とは異なる環境に適応できる人
日本とは異なる環境でも、心身共に健康に過ごせる適応力のある人は、海外で働くことに向いています。日本を出ると、医療サービスや衛生環境が大きく違うことに驚くかもしれません。国にもよりますが、日本とはまったく異なる環境でも、問題なく生活できる人は海外での労働や生活に向いています。
積極的にコミュニケーションを取れる人
現地の人と積極的にコミュニケーションをとり、人間関係やネットワークを築ける人も、海外で働くことに向いています。
日本を出ると、家族や友人がいない状態になる方がほとんどでしょう。そのため、新たな関係を築く必要があります。ビジネスにおいても他者の協力を仰ぐ、仕事を振ることが必要となるため、十分なコミュニケーション能力が必要です。
自力で問題を解決する能力がある人
海外での生活や仕事で問題が発生したとき、自分で解決できる能力がある人は、海外で働くことに向いています。自分ひとりで解決できないことは、現地の人に協力を求めることになります。そうしたプロセスを迷わず選択できるかどうかも、大事な視点です。生活上のトラブルだけでなく、仕事の報酬交渉なども自力で行う必要があるため、問題解決能力は重要になるでしょう。
海外で働くのにおすすめの職種10選
海外で働くのにおすすめの職種は、以下の10種です。
- 寿司職人
- 日本語教師
- 通訳・翻訳
- ITエンジニア
- コールセンター
- ツアーガイドや添乗員
- 保育士
- 看護師
- ホテリエ
- バイヤー
寿司職人
日本食はヘルシー食として、諸外国で高い人気を誇っています。日本食のなかでも代表的なものが「寿司」です。日本国内でイタリア人が開いているイタリア料理店に特別な感覚をもつのと同様、日本人が働いている寿司店は本場の味が期待されるため、日本人であることは海外の寿司店で働くうえでアドバンテージになるでしょう。
海外の本格的な寿司店は高級なお店の部類に入ることが多く、高待遇であることが多いようです。
日本語教師
全世界で日本語を学んでいる人は、およそ400万人ほどいると言われています。日本語を学ぶ人は中国や韓国、タイやインドネシア、などアジア地域に多く、日本で働く目的や、日本人相手のビジネスのために学んでいます。
現地の人に日本語を教えるためには、正しい日本語を身につけていることのほかに、相手の微妙なニュアンスを汲み取り、正してあげられるだけの高い現地語能力が必要となるでしょう。
通訳・翻訳
日本語の書籍やビジネス文書を現地語に翻訳する仕事や、ビジネスの仲介をする通訳の仕事には一定の需要があります。翻訳の場合には誤訳を避けつつ、ときとして現地の人に分かりやすい言葉に意訳できるだけの高い語学力が必要となるでしょう。通訳の場合は、その場その場で滞りなく適切な言葉に訳せるだけのスピーディさと臨機応変さが必要だとされています。
ITエンジニア
ITエンジニアは世界中で需要の高い職種であり、どこの国でも求人の件数は増加傾向にあります。また、ITシステムはプログラミング言語という世界共通の専門言語を使用した仕組みを基盤としているため、日本で培った技術や経験をそのまま海外での仕事に活かしやすいという特徴があります。
国にもよりますが、ITエンジニアは専門職として扱われるため、経歴や実績があれば就労ビザの取得が比較的容易であることもメリットのひとつです。
コールセンター
日系グローバル企業が現地に開くコールセンターや、現地企業が日本企業向けに開いたコールセンターで働く方法です。業務はほぼ日本語のみで行われるため、英語や現地語の高い語学力はあまり必要とされず、また特別な資格やスキル、経歴も要求されないことが多いため就職の間口は広いといえるでしょう。
給与はあまり高くないことが多いようですが、生活の基盤を安定させるために海外で最初に就く職業として選んでみるとよいでしょう。
ツアーガイドや添乗員
日本人観光客を対象とした現地発のツアーガイドの場合、業務のほとんどは日本語を使うため高いレベルの英語や現地語の能力は必要とされないことが多く、日常会話レベルの語学力があれば採用される可能性があります。
現地在住の日本人が少なければ、比較的よい給料がもらえることがメリットといえるでしょう。また、日本人に人気がある国であれば求人があることも多く、大手旅行代理店から仕事がもらえるという安心感もあります。
保育士
日本人が多く暮らす国や都市には、駐在員などの子女を預かるための日系の保育園が開かれています。日本人が対象の仕事であるため、高いレベルの英語や現地語のスキルは不要であることが多いほか、専門職という扱いになるため就労ビザが取得しやすいこともメリットのひとつです。
日本の保育士資格が必要とされる場合もありますが、資格不要としている求人もありますので、子ども好きで海外で働いてみたい人は検討してみてください。
看護師
国際看護師として海外で働くためには、国によって条件が異なりますが、現地国の看護師資格と就労ビザを取得するほか、患者の訴えをきちんと理解できるだけの高い語学力が必要とされます。
国によって日本の看護師資格をそのまま活かせる場合もあれば、大学卒業相当の資格が必要な場合もあり、国ごとの違いをしっかり把握しておく必要があります。
待遇面はアメリカのように日本の水準を超える給与が得られる国がある一方、日本と同等、あるいは日本の水準以下である国もあります。
ホテリエ
「おもてなし」という言葉があるように、日本のサービスの水準は世界的に見て高レベルにあるといわれています。海外のホテルでも日本人特有の細やかな気遣いは大きな武器になるでしょうし、周囲のスタッフへのホスピタリティ教育などの場面でも活躍が期待できるでしょう。
主に日本人を対象とする日系ホテルでは高いレベルの語学力は求められませんが、多くの外国人が訪れるホテルでは、英語や現地語を話す能力が求められる場合もあります。
バイヤー
資源の乏しい国とされる日本は、多くの原材料や商品を輸入しています。メーカーはアジア諸国などの新興国から資源を安く輸入しようとし、商社は世界中の国々からデザインや機能のすぐれた商品を輸入しようとしています。そのため、実際に現地で商品を見て確認する仕事は一定の需要があるようです。
現地企業の担当者と商談ができるだけの語学力や交渉力、製造や流通に関する知識や経験などを有していれば比較的就職先は多いでしょう。
海外で働くために求人を探す方法
海外で働くために、求人を探す方法は以下のとおりです。
- 日本の転職エージェント
- 海外の求人サイト
- 海外の人材エージェント
もっとも簡単な方法は、日本の転職エージェントに登録して海外へ赴任できる日系グローバル企業や外資系企業を紹介してもらうことです。
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まとめ
海外で働くことを選ぶと、異なる文化や価値観をもつ人たちと交流でき、国内では得られない経験ができたり、実力主義の社会でやりがいをもって仕事ができたりするなどのメリットを感じられます。一方で、海外で働くことに高いハードルを感じる方が多いのも事実です。
「海外で働いてみたいけれど、自分には無理かもしれない」と思う方は、まずは国内の外資系企業や日系グローバル企業に転職し、海外企業がどういう風土や文化を持っているのかを肌で感じてみてはいかがでしょうか。
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