日本と諸外国とでは転職に対する考え方が大きく異なっています。海外では日本と比べて転職が盛んに行われているというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本の転職事情と海外の転職事情を対比させて紹介した上で、外国企業の雇用の特徴や転職者に対する考え方を解説しています。外国企業への転職をお考えの方はぜひ参考にしてください。
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■日本の転職事情
かつて日本は、終身雇用と年功序列が当たり前という風潮でした。勤続年数が長ければ長いほど給料や退職金が高くなったことから、転職をしないほうが有利であり、一度入社した会社に定年まで勤めるのが一般的な考え方でした。このため、まったく転職を経験しない人が多数を占めていました。
現在でも、転職回数が多い人や、短い勤続年数で前職を離職した人は、忍耐力がないなどと、マイナスの印象をもたれがちです。中途採用の場面でも、企業としては採用した人材になるべく長く働いてもらいたいと望むので、応募者の年齢や、過去の勤続年数がスキルや経歴などと並んで重視されます。
■海外の転職事情
ここでは、諸外国の転職事情を解説します。
| 各国の雇用の特徴と転職事情
多くの国では、労働者がより良い待遇やキャリアアップを求めて転職するスタイルが一般的です。例として、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国の転職事情を紹介します。
☑ アメリカ
アメリカの雇用形態は日本と多くの違いがあります。日本の雇用では、従業員の職務能力に対して給与が払われる職能給が多く見られますが、アメリカでは、担う仕事によって給与が決められる職務給である場合が多くなっています。
年功序列が生きている日本企業では、勤続年数が長くなるにつれ職務能力が向上すると考えられ、自然と給与が上がっていくことが大企業ではまだ一般的です。
しかし、アメリカでは担う仕事内容が変わらない限りは給与が上がらず、給与を上げるためには希望の給与を得られるだけの職につく必要があります。
自分のスキルをもっと活かせる転職であれば、収入の増加やキャリアアップに直結するということです。
したがって、アメリカではキャリアアップのために転職を繰り返すことに対する抵抗感は薄いといえます。
また、アメリカでは、企業が従業員のスキルアップをサポートする仕組みがない代わりに、求職者は専門学校などでジョブトレーニングを行うのが一般的であり、転職をサポートする仕組みが社会のシステムとして確立されています。
☑ イギリス
イギリスでも転職は一般的です。一度入った会社に勤め続けて定年を迎える、という意識はほとんどありません。アメリカと同様に、仕事をこなしていく中でスキルアップをし、そのスキルや経験を活かしてもっといい条件の仕事を求めていくスタイルが一般的です。
そのため、イギリスでは3年から5年程度でどんどん職を移っていく労働者は珍しくなく、常に次の仕事を探しながら働いているという人もいます。
☑ ドイツ
ドイツではあまり転職が活発ではありません。これにはドイツの教育制度が深く関わっています。ドイツでは、10歳で自分の進路を3つの選択肢の中から選びます。
1つ目はギムナシウムへの進学で、これは大学進学を目指す8年制の学校です。2つめは基幹学校で、これは職業訓練校という性格が強い5年制、もしくは6年制の学校です。3つめは実科学校で、これは基幹学校と同様、職業訓練校としての性格も備えながらも、ギムナジウムへも編入できるという学校です。
日本では小学生にあたる時期に、高等教育を受けるか、それとも専門職の教育を受けるかに分けられ、後々になってからの転職があまり一般的ではありません。
☑ 韓国
熾烈な受験戦争でよく知られる韓国は、有名大学を出ても就職状況は安泰ではありません。サムスン電子を始めとした大企業は韓国の中でも給与水準が高いために、これらの企業に就職できた人で離職する割合は少ない傾向にあります。
しかし、中小企業に入社した人はより良い労働条件を求めて転職を繰り返す人が多く、総じて韓国では転職への抵抗感は低いといえるでしょう。
| 各国の勤続年数
下の表は、日本を始めとした14か国の労働者の平均勤続年数を示しています。
国名 | 男女計 | 男性 | 女性 |
日本 | 11.9 | 13.3 | 9.3 |
アメリカ | 4.2 | 4.3 | 4.0 |
イギリス | 8.0 | 8.2 | 7.9 |
ドイツ | 10.7 | 11.0 | 10.2 |
フランス | 11.4 | 11.3 | 11.5 |
イタリア | 12.1 | 12.5 | 11.7 |
オランダ | 9.8 | 10.4 | 9.1 |
ベルギー | 11.0 | 11.0 | 11.0 |
デンマーク | 7.2 | 7.3 | 7.0 |
スウェーデン | 8.6 | 8.4 | 8.8 |
フィンランド | 9.5 | 9.3 | 9.6 |
ノルウェー | 8.9 | 9.1 | 8.7 |
オーストリア | 9.6 | 10.3 | 8.7 |
韓国 | 5.8 | 6.9 | 4.5 |
※データブック国際労働比較2018 従業員の勤続年数(2016年)より引用
男女合計での平均勤続年数は、アメリカと日本とでおよそ3倍の開きがあります
ただし、日本とアメリカとでは労働力人口の年齢構成が異なる点には注意が必要です。
日本は少子高齢化の進行が諸外国よりも進んでいるので、若年の労働者が少ない分、平均勤続年数が押し上げられているものと考えられます。
そのため、いくらか割り引いて考える必要はありますが、アメリカの労働者は日本の労働者と比べて短いスパンで転職を繰り返しているであろうことはデータから読み取れます。
■海外の転職に対する考え方
ここでは、海外の転職に対する考え方について解説します。
| 基本的にはジョブ型雇用
日本企業によく見られる雇用の形はメンバーシップ型雇用と呼ばれます。これは人を採用してから、その人に仕事を割り当てるという方式です。企業は人材を必要に応じて配置転換でき、従業員は人事異動により様々な職務に携わることで社内でのスキルアップとキャリアアップが可能になります。
これに対して、諸外国の雇用の形はジョブ雇用です。ジョブ雇用型では、まず仕事が存在します。これを担えるだけのスキルや経験をもった人材が不足しているなら、新たに人を雇用して仕事に割り当てるという方式です。ジョブ雇用型で雇用された場合、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」で仕事の内容や範囲が具体的に定められます。
| キャリアップのために転職する
ジョブ雇用型で雇用された場合、仕事内容は職務記述書で厳密に規定され、また給与は職務によって決まります。このため、自分のスキルを活かしてより高い収入やより良い待遇が得られる職につきたい場合や、自分自身の価値を高めるためにスキルを身につけたい場合などは、別の職につく必要があります。
このため、ジョブ雇用型の環境では、労働者がキャリアアップやスキルアップのために転職することは当然のことと見なされます。
■変わる日本の転職意識
ひとつの会社で定年まで勤め上げるのが一般的だった日本社会でも、転職者数は年々増加しており、総務省統計局の調べでは、2018年の転職者数は約329万人となっています。
出典:総務省「労働力調査」
転職者数の増加には、人材不足の深刻化やグローバル化といった背景があります。人手不足の深刻化により、以前は採用条件を「経験者のみ」や「大卒のみ」としていた企業が「未経験者可」や「学歴不問」などに条件を変更するようになりました。
また、専門的なスキルや経験をもっている人材にとっては国内企業だけではなく、海外企業も転職の候補として考えられるようになっており、グローバル化の進展は人材争奪戦にも影響を及ぼしています。
かつては転職は35歳までにしなければ成功率が下がってしまうという、いわゆる「35歳限界説」もありましたが、近年は40歳以上でも転職を成功させる例が増えているというデータもあります。日本の外資系企業やグローバル企業はキャリアアップ転職が主流であり、年齢よりも人やスキルを重視するからです。
転職市場は大きく変化しています。グローバル企業へ転職を考えるなら、エンワールドのようなプロのエージェントの情報力にサポートしてもらうことがますます重要になってくるでしょう。
■まとめ
近年の日本では、終身雇用や年功序列の崩壊により、いまや2人に1人が転職するともいわれています。それゆえ、業界や国境を越えた人材の流動化は年々激しくなりつつあります。
多彩な経験や経歴、専門スキルをもつ人材にとっては、海外企業はさらなるスキルアップとキャリアアップのための有力な選択肢といえるでしょう。
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