合同会社デロイト トーマツ
大久保 理絵氏 / 下川 憲一氏
【全3回インタビューシリーズ/第三弾】
デジタル変革の加速とともに、AIやデータ活用の重要性はかつてないほど高まっています。その中核を担うのが、合同会社デロイト トーマツのAI&Data(AI&D) Unitです。RPAの黎明期からデジタルビジネスを牽引してきた大久保 理絵氏と、戦略コンサルタントとしてキャリアを積み、今や国内最大級のAI&D Unitをリードする下川 憲一氏。個性的なキャリアを歩んできた2人に、組織の役割と展望、そしてこれからのキャリアの作り方についてお話を伺いました。
思わぬきっかけからテクノロジーの道へ
これまでのご経歴やキャリア形成の過程についてお聞かせください。
大久保氏:今のキャリアのきっかけとなったのは、高校時代の偶然の選択でした。もともと履修を希望していた選択科目が定員に達していたため、「第二希望」で選んだプログラミングの授業。そこで、好きな楽譜をプログラミングしてオルゴールの音色を奏でるという課題に没頭したことが、テクノロジーへの興味の原点になっています。
その後、留学先で経営学を学んだ後にコンピューティングサイエンスに転向し、帰国後は広告代理店に入社。情報システム部を経てマーケティング部で経験を積んだのち、原点回帰でエンジニアへの転身を志してシステム会社に転職。さらにコンサルティングファームへ。ERPパッケージの会計モジュール担当として会計を学び、プロセス改善や、内部統制、リスク評価と次々に領域を広げていきました。論理的に決めてキャリアを歩んだというより、「導かれてきた」ような感覚です。その時々で目の前の仕事を極めたいと夢中になってきた結果、気がつくと今がありました。
下川氏:私はITの事業会社でキャリアをスタートしました。その後、国内の経営大学院に通ったのち、この業界に入りました。コンサルタントとしては、戦略部署で戦略コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。当時所属していた組織内の統合を経ながらも継続して戦略領域の道を歩んできました。転機となったのは、クライアントとの関係を深める中で、よりその企業に寄り添う仕事がしたいと感じ、転職によりOffering組織(いわゆるサービスを専門とした組織)からIndustry組織(業種、顧客軸を中心とした組織)に異動したことです。クライアント専任の立場に移り、一つの企業の課題へ長期的に向き合う経験を積みました。
新たな成長と共創の場として選んだ、デロイト トーマツという場所
お二人はなぜAI&D Unitを選ばれたのでしょうか?
下川氏:デロイト トーマツへの転職を決めたのは2017年です。それまでいた会社でその年の優秀プロジェクトを表彰するプレジデント賞を受賞したタイミングで、さらに多くの人々と切磋琢磨して自分を高めたいという気持ちが湧いてきました。安定した収益基盤を持ちながら新しい領域への投資に積極的だったこと、そして組織として常に高い目標を掲げて動いていたことに強く惹かれ、当時はIndustry組織のTechnology, Media & Telecom(TMT) Unitに入社しました。その後、会社の戦略的な領域強化に伴い、AI&Dataの前身のAnalytics & Cognitive(A&C)に異動してきました。
大久保氏:私の感覚では、現在のAI&D Unitという組織は「選んだ」というより「作った」に近いです。かつてグローバルアウトソーシングのプロジェクトにおいて全方位で設定された地域横断のコスト削減に悩んでいた際、当時強力な解決策となり得るソリューションだったRPA(Robotic Process Automation)を知りました。イギリスにいた有識者に会うべく、出張の機会を活かしてロンドンオフィスに直接出向き、現地のDirector(当時)に話を持ちかけ、日本でのビジネスを一緒に立ち上げることになりました。それが徐々に拡大し、グループの組織再編を経て生まれたのが現在のAI&D Unitとなっています。
主役を担うだけでなく、舞台全体を支える存在へ——
AI&D Unitの現在地と展望
AI&D Unitにはどのような役割・成長が期待されていますか?
下川氏:現在、AI&D Unitは、コンサルタントと子会社の開発チーム合わせて約350名で構成されています。そこへさらにリスクアドバイザリー側のAIチームであるData Analytics & Data Governance(DA&DG)も含めると、全体で700名規模のAI部隊がデロイト トーマツには存在します。
コンサルティングのAI&D UnitとリスクアドバイザリーのDA&DGチームはそれぞれ異なる専門性を発揮しています。提供するサービスが重複しない体制でクライアントに向き合うチームの規模が拡大した結果、対応可能な案件のスケールが飛躍的に大きくなりました。
今後のテーマは、AI&D Unitが単独で案件を完結させるだけでなく、グループ内の他のチーム、例えばそれはIndustry組織、また他Offering組織を技術面から支えていくことです。表舞台に立つ「主役」としてだけではなく、ビジネス変革を裏から支える「黒子」としての役割も担うフェーズに来ていると思います。
多様な専門チームとの横断コラボレーションが生み出す大きな変化
「AI&D Unitだからこそ提供できる価値」はどのような点にあるとお考えですか?
下川氏:デロイト トーマツのAI&D Unitの強みは、グループ内の多様な専門チームと連携して大型案件を動かせることです。たとえば、ある大手製造業のプロジェクトでは、Operations_Industry & Domain Solutions (OI&DS) Unitのスマートモビリティのチームが企画構想を立ち上げ、「それをAIでどう実現するか」という要件がAI&D Unitに持ち込まれました。大規模な案件となる場合には、クラウド基盤の設計はEngineering Unitが担い、AI領域の開発、アプリケーション部分をAI&D Unitと子会社であるデロイト トーマツ ノード合同会社が担当します。このように複数の専門チームがコラボレーションしながらプロジェクトを推進できる点が、デロイト トーマツのAI&D Unitならではの強みです。
現在、各企業のAI領域への投資規模は従来のデジタル化とは桁違いに大きく、ほぼすべての意思決定にCEOや副社長といったCXOクラスの方が関わります。今後1〜2年で、クライアントの組織に本質的な変化をもたらせる領域がますます広がっていくと思います。
4つのキャリアパスを自らデザインできる、自由で柔軟な組織カルチャー
AI&D Unit内でのキャリアパスについて、どのような選択肢がありますか?
下川氏:AI&D Unitには現在、大きく4つのキャリアの方向性があります。 1つ目は「AI Strategy」。AIを軸に経営戦略を描くコンサルタントとして、クライアントの意思決定に深く関わる役割。 2つ目は「Data Modernization & Analytics」。データ基盤の構想・設計・構築・活用はあらゆる業界で需要が高まっており、どこでも通用する専門性。 3つ目は「AI&Operations」。LLMを活用したシステム開発から、AIネイティブなプロセスツールを活用した業務変革までを担います。 4つ目は上記3つのOfferingを支援する「Technicalチーム」。AI単独では完結できないような、高度なエンジニアリング領域での顧客との合意形成を担い、初期段階(大規模開発に入る前)の開発力が求められる役割です。
データからAIへ、AIからストラテジーへ…といったように、固定されたキャリアパスではなくやりたいことに応じて、キャリアパスを自分でデザインすることができるような体制を整えています。
4つのどれから始めても構いません。実際に経験してみて、「どうしても別の領域への興味を捨てられない」と思ったら、そちらへ移ることも可能。それくらい自由で柔軟なキャリアの作り方ができます。
一つの専門性を起点に、新たな掛け算を生み出すスペシャリストの価値
AI&D Unitではどのような価値観や姿勢を持つ方が活躍しているのでしょうか?
下川氏:まずはどこか一つの分野でスペシャリストになることが大切です。専門性が「0」のままでは掛け算は生まれませんが、「1」を超える軸となる強みがあれば、他の専門性を掛け合わせるほどに価値は大きく広がっていきます。
大久保氏:広く浅く学ぶよりも、まずは軸を持つことが重要で、その積み重ねによって、誰にも真似できない自分だけのスキルセットが形づくられていくと考えています。クライアントに対して有益なインサイトを与え、届けられる人こそが真のコンサルタントと言えるのではないでしょうか。対話を通じて「面白い」、「いろんな視点をくれる」と感じてもらえるような方が、AI&D Unitで活躍していると思います。
「声を上げれば、変わる」。ボトムアップで推進される多様性
働きやすさや多様性について感じていること、取り組まれていることはありますか。
大久保氏:私は現在、AI&D Unitの活動と並行して、多様性推進のリーダーも兼任していますが、テクノロジー領域の女性比率の低さは業界全体の課題だと感じています。企業としての目標に対しても、さらに歩みを進めていく必要があります。
制度面はすでに整備が進んでおり、子育てや介護など、何か困ったことがあれば対応できる状態になっていますが、それよりも重要なのは、声を上げたときに柔軟に変わる文化があるかどうかだと考えています。
例えば私自身の経験で、育児中に海外出張が必要になった際、周囲に相談したところCFOにまで共有され、その時代はまだ導入されていなかったベビーシッター費用の支援に繋がり、短期間で新たな支援制度ができていく様を目の当たりにしました。個人が直接制度を動かすというよりも、現場の声を真摯に受け止め、必要な対応を迅速に形にしていく。そうした風通しの良さと、共に働く仲間を支える姿勢が根付いていることが、この会社の大きな特徴だと感じています。
下川氏:もともと会社の制度として評価者とは別にコーチがついて目標設定や個々のキャリアパスを考える仕組みがあります。しかし、AI&D Unitではキャリア支援の一環として、女性管理職メンバーを対象とした「スポンサー制度」をはじめとする各種支援の取り組みも始まりました。本取り組みでは、早いキャリア段階から一人ひとりにスポンサーが付き、本人が「組織として期待されるキャリア」ではなく、「自分自身が目指したいキャリア」を明確にするための対話を重ねています。そのうえで、必要な経験や機会への橋渡し、日常的なコミュニケーションを通じた後押しを行い、次の一歩に迷いを感じやすいメンバーに対しても、前向きに挑戦できる環境づくりを目指しています。
制度面や働き方について、転職を検討している方へアドバイスがあればお聞かせください。
大久保氏:現時点で制度がどこまで整っているかで判断するのではなく、今後の姿勢や成長の方向性にも目を向けることが大切だと考えます。制度は、使う人がいて初めて意味を持つものであり、声を上げる人がいてこそ進化していくものです。困ったことがあったときに周囲に相談できるか、状況を理解して動いてくれる人がいるか。そういった点を確認すると良いのではないでしょうか。
チーム全員で考え続ける中長期的なキャリア形成
メンバー人ひとりが中長期的に活躍できるよう、どのような取り組みを行っていますか?
下川氏:キャリア開発は個人任せにしない、それがAI&D Unitの方針です。リーダー陣が定期的に集まり、AIとデータ領域でどういう組織でありたいか、そのために必要な人材像は何かを合宿形式で議論する場を設けています。個人へのサポートとしては、スポンサー制度のほか、キャリアの方向性に応じた柔軟な異動の仕組みもあります。
市場が大きく変化している中で、5年後の未来を正確に見通すことは困難です。だからこそ、今自分たちはどこに向かうべきかをチーム全員で考え続けることが大切だと考えています。今年度は、AI&D所属のPartner、Managing Director、Directorがあつまり合宿形式で、将来の組織、メンバーの育成などについて議論する予定です。
変化を楽しむ想像力と好奇心を。次世代のキャリアに挑戦するあなたへ
最後に、このページをご覧になっている皆さんへメッセージをお願いします。
下川氏:AI&D Unitは今、勢いのあるホットな組織です。しかし私たちは、単にトレンドだからAIを扱っているわけではありません。クライアントのビジネスに対しどんな変化をもたらせるかを真剣に考えた結果、現時点ではAIが最適な手段であると判断しています。私たちのミッションに共感し、興味を持って真摯に取り組みたいと感じていただける方にはぜひご応募いただければと思います。
大久保氏:スキルは入社してからでも身につけられるので、ぜひ想像力と好奇心を持って来ていただきたいです。何か没頭できることがある、そしてそのことを強みだと思っている方に来ていただけると嬉しいです。変化の激しい時代ではありますが、そのような環境を前向きに楽しみながら挑戦していきたいとお考えの方からのご応募を、心よりお待ちしています。
大久保 理絵氏
合同会社デロイト トーマツ AI&D Unit Partner
合同会社デロイト トーマツ グループ Chief People & Purpose Deputy Officer / Diversity, Equity & Inclusion リーダー
長年にわたりオペレーション改革コンサルティングに従事し、業務・組織・ITを統合したオペレーティングモデル設計を強みとする。RPA、SSC構築、アウトソーシング支援などを提供し、製造業を中心に多様な業界でグローバル変革を推進。2021年より合同会社デロイト トーマツ グループのDEIリーダーとして、Deloitte Asia Pacificとも連携しDEI推進を牽引している。
下川 憲一氏
合同会社デロイト トーマツ AI&D Unit Leader / Partner
経営と技術の融合をテーマとして、幅広い業種、業界に対して15年以上の支援を行っている。中期経営戦略、事業戦略、新規事業開発などの戦略立案プロジェクトとAIを含めたDigital Toolを活用した業務改革、組織構造変革のプロジェクトを数多く手がけている。また、戦略・計画立案だけでなく、実行サポートの経験も豊富。
内田 春菜
エンワールド・ジャパン株式会社
Technology/ Consulting division, Global & Local Team - Team Manager
商社、日系IT企業の法人営業を経て2021年エンワールド・ジャパン入社。テクノロジー/コンサルティング領域のチームマネージャーとしてメンバーマネジメントにも従事。外資系コンサルティングファームやITベンダーを中心に、マネージャー〜エグゼクティブ層の採用支援を強みとする。候補者・企業双方を一気通貫で支援するスタイルにより、入社後活躍(Enabling Success)を重視した高品質なマッチングの実現を志し、日々支援を行っている。
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